もっと、せいのこと。

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『望まない興奮の真実(興奮の不一致)』について、考えること。

 

前回、「興奮の不一致」についての動画を共有しました。

seikyoiku.hatenablog.com

 

前回の動画を見ていただいた方は、もうどういうことか分かりますよね。まだご覧になってないからは是非見てみてください。一言聞いただけでは何の話かよく分からない、「望まない興奮」や「興奮の不一致」、その人間関係や社会への悪影響などを、非常に分かりやすく説明してくれています。

 

 

「体は正直」って本当……? 

例えば、AV、エロ本などで「体は正直だ」「体はそう言ってないよ」。そんなフレーズを聞いたことはありませんか。

これは事実ではありません。

エミリーは、具体的な例と科学的知識とを用いて、これを非常にわかりやすく説明してくれます。

 例えば……

  • 脳の「報酬中枢」は、快か不快、欲しいか欲しくないか、学習(ご飯前のベルとよだれの結びつきなど)などを司る。
  • 「快/不快」と、「欲しい/欲しくない」は、関連しているが別物
  • 学習から得られる体の反応(例:パブロフの犬のベルの音でよだれが出ること)、物事と直接関係している(ベルを美味しそうと思っている?!)とは限らない。
  • 研究で、体の反応(性器に流れる血流など)から人の心を推測するのは不可能であると判明。
  • 体が〇〇という反応したからと言って、その人がそれを欲しがっている・喜んでいるとは限らない。
  • 反対に、体が〇〇という反応しないからと言って、その人が欲しがっていないとも限らない。(※もちろんここは都合よく解釈・悪用禁止!!この下の一文のためのものです!)
  • つまり、本人の自主的な言葉での説明が唯一の確認方法。(もちろん強要されていないこと!!)
  • 自分の気持ちや意思は、他人が外から勝手に判断できることではないし、またされるべきでもない。
  • かつ、体の反応≠本人の意思や同意!

 

体の反応≠本人の意思

こういう誤解って、性の世界で特別多く確認されています。特に日本ででよく聞く「嫌って口では言っているけど、濡れている/勃起しているよ」みたいな話、これを知るとゾッとしませんか。性のこと以外で起きないというのも興味深いことです。

例えばエミリーは、虫がいるりんごを食べても生理的反応で唾液が出た時、他人が「けど唾液が出てるってことは食べたがってるんだよね?」って言いますか、と聴衆に問うています。

言いますか?聞いたことありますか?そして何より、納得できますか?私はできませんし、想像つきません。というか、一体何を言っているんだコイツ……?と思ってしまいます(笑)

けど場面がセックスだと「嫌って言ってるけど濡れてるよ」と強要するシーン、残念ながら聞いたこと、見たことあります。

ちなみにこれは男性→女性に限った話ではなく、どのような関係、ジェンダーにも関係する話です。また、AVやエロ本などに限った話でもなく、実は普段見るドラマなどでも何気なく使われていることが多いです。(一度意識して見てみてください。)

 

体の反応≠同意

この「興奮の不一致」について理解していると、以前の記事に書いた2つの同意の概念(体の自己決定権、性的同意)がより生きてきます。

態度やボディランゲージだけでは分からないこと、そして気持ちを聞く大切さ、気持ちを伝える大切さ、それを尊重する大切さなどがよく分かりますよね。「空気を読む」だけでは到底足りません。

 

seikyoiku.hatenablog.com

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日本の(残念な)判決

非常に残念なことにここ1〜2ヶ月の間に、日本では様々な強姦訴訟が無罪になっています。これはとても許しがたいことであり、また正直、裁判官がこの話や同意の概念をまだきちんと理解していないからこそ出る判決ばかりだと思います。

このことに関しては、きちんと声を上げて戦っていかなければならないと思っています。

#MeTooから1年 なぜ日本は同意のない性交をレイプと認めないのか イギリスとの比較(小川たまか) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

最後に

体の反応が必ずしも気持ちと一致しない「興奮の不一致」について、医学的な話から生活に関わる部分、司法に関わる部分まで、動画に沿って広くお話させていただきました。

相手の態度やボディランゲージを見ることは非常に大切です。しかしそれだけに頼らず、言葉としてきちんと相手の意見を求め、それを聞く大切さ、また体の反応は同意に取って代わるものではない、ということを、より深く知っていただけるお手伝いになったらいいなと思います。

ぜひ日本で、世界で、それぞれ個人が、きちんと自由意志で気持ちを伝えられて、それをきちんと尊重しあえるよう、自分の周りから少しずつ広げていきましょう。  

 

 

邦題:望まない興奮の真実(興奮の不一致)

原題:The truth about unwanted arousal

講演者・制作:エミリー・ナゴスキー(Emily Nagoski)・TED 

元ページ: https://www.ted.com/talks/emily_nagoski_the_truth_about_unwanted_arousal?utm_campaign=tedspread&utm_medium=referral&utm_source=tedcomshare